どんぐり学舎

かてごりー:子どもとのくらしの中で

8月の終わりに

かつて、小学校の国語の教科書には

「戦争」の物語が各学年に掲載されていました

出版社によって違うので、

みなさんの思い出と私の記憶が重なるかどうかはわかりませんが、

じっくり考えると、「あれは国語の教科書で読んだのか」という記憶が

よみがえるかもしれません

 

「戦争」の話になると、「政治的」とすぐに嫌な顔をする人がいるけれど、

戦争が政治的なら経済も文化も生活そのものは全て、政治なのですから、

なんの議論もできませんし、主張もできません

縄文人からの日本の歴史をたどってみれば、

私たちは、今の生活を、政治によって送っていることは明らかなのです

それを忘れたり、忌み嫌ったり、避けようとしたりすると、

おかしな方向に向かうことは、少し考える力のある人ならわかっているはずです

 

でも、私のような立場の人間が、無垢な子どもたちに思想を押しつけたり、

善悪の判断を断定して教えたりすることは、絶対にやってはならないことです

私はただ、国語や算数と同じように、

自分の頭で考え、自分の生きる方法や、生きる世界を決める力を

全ての子どもたちに持ってほしいと考えています

 

誰かに指図されるのではなく、誰かに封じ込められるのではなく、

自分の頭で考え、選ぶことができるということ

 

当たり前のことが、まるできれいごとのように掲げられているのに、

どんどん、どんどん、手の届かないところにやられていくような昨今

それでも私は、目の前の子どもたちと考えたいのです

 

8月の終わりに、

どんぐり学舎の授業は再開しました

絵本の読み聞かせを楽しみにしている子どもたちに私が用意したのは

以下の二冊です

 

おかあさんの木 (ポプラポケット文庫 (032-1)) おかあさんの木 (ポプラポケット文庫 (032-1))
大川 悦生

ポプラ社 2005-10-01
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きょうりゅうのかいかた (岩波の子どもの本 カンガルー印) きょうりゅうのかいかた (岩波の子どもの本 カンガルー印)
くさの だいすけ 薮内 正幸

岩波書店 1983-11-15
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「おかあさんの木」は

私が小学生の頃は国語の教科書に掲載されていた戦争の頃の物語です

 

7人の息子を持つ母親が、戦時中に長男から順に出征を見送り、

その度に裏庭に「桐の木」を植えていくお話です

まだ何人かの息子が出征していないうちは「お国のためにがんばれ」と桐の木の世話をし、

全員が出征し、桐の木が7本になった後、長男の戦死の知らせを受け取ると

「あれは嘘だ、お国のためにだなんて、思ってない」と裏庭の桐の木の根元にすがって泣き、

次々に息子たちの戦死の知らせを受け取っては憔悴していきます

「お前たちが悪いんじゃない、大人が悪かった。

戦争はいやだ、子どもたちを戦争へはやらない、と

頑張れなかったのが悪いんだ」

と、桐の木の息子たちに謝るのです

帰還兵を乗せた列車が来る度に曲がった腰で駅へ向かい、

風が戸を揺らせば「四郎かい、五郎かい」と起き上がる

そんな数年を過ごし、

ついに、五郎だけが生還するのですが、

玄関の戸口を開けても家の中におかあさんはいない

裏庭にまわってみると、母さんは、五郎の桐の木の根元で息を引き取っていた

という

お話です

 

小学生の私は、この話を読んで、しばらく放心状態で、涙が止まりませんでした

何年生だったかもう忘れてしまいましたが、どうしてこんなことが…と信じられませんでした

ひとつ上の友達が、

自分の教科書の「戦争の話」を、遊びにいったその子の部屋で読み聞かせしてくれた時は、

泣きじゃくって止まらず、ずっと慰めてもらったのを覚えています

 

その時読んでもらったのは

かあさんのうた (おはなし名作絵本 29)

かあさんのうた (おはなし名作絵本 29)
大野 允子 山中 冬児

ポプラ社 1977-05
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原爆の夜、くすの木は、自分の根元で少女の歌う子守歌を聴きます

それは、親とはぐれ、顔を火傷し、目が見えなくなった赤ん坊をあやす少女の歌声でした

「おかあさんよ」と自分が親代わりとなり、ぐずるその子をあやしていたのです

やがて、ふたりはくすの木の根元で亡くなってしまいます

 

ほとんどの人が知っているのは、この物語でしょうか

 

かわいそうなぞう (おはなしノンフィクション絵本) かわいそうなぞう (おはなしノンフィクション絵本)
土家 由岐雄 武部 本一郎

金の星社 1970-08
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上野動物園の実話で、

戦争中、飼育している動物を殺処分せよ、という命令に従えなかった飼育員たちと、

最後には状況を理解したかのように餌を食べずに餓死する象たちの物語です

それでも、

ある話を聞いて、私は大人になってからこの実話を描いたもう一冊の絵本を買いました

 

そして、トンキーもしんだ そして、トンキーもしんだ
たなべ まもる かじ あゆた

国土社 1982-11-01
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実話に基づいていますから、大筋は同じなのですが、教科書に掲載されていた上の本には

なかったエピソードがいくつか含まれています

私にとって印象的だったのは、

裏表紙に掲載されている上野動物園飼育課長さんの寄稿です

終戦直後、動物園への餌の芋を運ぶ馬車が、

「お母さん」たちの集団に止められたことがある、というエピソードでした

「そのじゃがいもをわが子に」と

お母さんたちも必死です

「戦争は人々を狂気の鬼にするものなのです」と結ばれています

飼育員たちは動物を守るために

親たちはわが子を守るために

 

他にも、

この仕事をするようになってからあらためて再会した国語の教科書で読んだのは

『ちいちゃんのかげおくり』

『川とノリオ』

『一つの花』

『石臼の歌』

など、そして、中学2年生の教科書に

おそらく今も掲載されている衝撃的な小説『夏の葬列』

などなど、

あるのですが、なぜだか、改訂ごとに、

こういった内容の単元は減ってきているように思います

 

ジャポニカ学習帳の虫の表紙が「気持ち悪い」という苦情のせいでなくなったように、

戦争の話は「残酷で悲しすぎる」という苦情でも集まったのでしょうか

私たちは、戦争を見たこともなければ、身近にいた経験者も年々減少している状況で、

もう、子どもたちは「知る必要もない」「無関係」なことなのでしょうか

 

戦争は残酷で悲しすぎるものなのです

それをみんなが知っていたら、二度と戦争を起こそうなどと、誰も思わないでしょう

 

この本を読んだ週、ちょうど日本は、ミサイルが領空を通過したという騒ぎのただ中でした

テレビが常駐していないはずのどんぐりっこの家庭ですが、

親の携帯の警報で起きてしまった、という子もいました

詳しくは知らなくても、何かが起こったことを知っている子もいれば、

ミサイル、というワードがタイムリーだとわかっている子もいました

 

2学期が始まるにあたり、「なんで勉強するの」という話題から、私は子どもたちの前に立ちました

「せんせいは、答えを知っているんだ」というと、「なんで?なんで?」と子どもたち

「率直に言うと、二度と戦争にならないようにするため」

きょとん…

なんでミサイルを飛ばすの?

なんで爆弾を落とすの?

「あ、知ってる!原爆の日、夏休みの時、あったよね」

「うーうーって、鳴って、黙祷するんだよね」

「ピカドン、って絵本で読んだよ」

そうだよ、

昔の話

もう、二度とそんなことは地球上のどこでも起こらないようにしなきゃ

世界中のエライ人たちはさ、すごく頭がよくて、すごく何でも知ってるはずなのに、

どうして話し合いしないで武器を使い合うんだろ

みんなは、気に入らないことがあったら、相手を殴る?爆弾しかける?

「殴らないーーー」

「爆弾使わないーー」

話し合いが通用しないから殴る、武器を使うってことらしいのだけど、

国のエライ人が、世界中のエライ人が、頭のいい人たちばっかりなのに、

なんで話し合いが通用しないんだろう

私から見ると、頭悪いんじゃないの?って思ってしまうんだよね

だから、みんなには、その謎を調べてほしいんだよね

そのためには、外国語を話せるようにならなきゃな、って思ったり、

戦争の仕組みを知らなきゃな、って思ったり、

それぞれが大人になって考えることになると思うんだけど、

でも、一番大事なのは、自分で考えるってことなんだよね

それって…

「どんぐりじゃーん」

そうだよね

『おかあさんの木』を神妙な顔で聞いてた子どもたちに、

もう一つだけ話しました

 

隣の市、前橋にね、若い夫婦がいたの

夫婦には二人の子どもがいたんだ

一人はね、まだ生まれて3ヶ月くらいだったの

やっと首がすわってね、おしゃべりはこれからっていう、可愛い時だったんだ

でもね、そんな頃、その若いお父さんに「戦争に行きなさい」っていう命令が来たの

その時、それに逆らうことは許されなかったの

郵便局で働いていた普通のお父さんだよ

みんなのお父さんとあまり年齢も変わらない、若いお父さんだよ

命令通り、お父さんは戦争に行ったの

小さなお兄ちゃんと、生まれたばっかの赤ちゃんの弟と、

若い奥さんを置いて

それからしばらくして、戦争は終わったんだけど、その若いお父さんは、

ロシアの奥の方で死んでしまって、遺骨も戻ってこないまま、

家族とは永遠に会えなくなってしまったんだ

 

そのお父さんはね、私のおじいちゃんで、

生まれて3ヶ月の赤ちゃんは、私のお父さんなんだ

だから、私のお父さんは、自分のお父さんのこと、覚えていないんだって

郵便局にお勤めしていた普通のお父さんが、急に、戦争の場所に連れて行かれて、

武器を持たされて、それで、攻撃されて、死んじゃったんだよ

 

武器とか、戦車とか、戦闘機とか、

かっこいいよね

でもさ、私はそうは思えないんだ

おじいちゃんを死なせて、お父さんから父親を奪った戦争はさ、

もうやだな~ってどうしても思い出しちゃうんだ

みんなが、大きくなって、戦争に行かなくちゃならなくなるなんて、考えなくないんだ

大丈夫だよ、もう戦争は起こらないよ、それは昔の話でしょ、って

言ってくれた生徒も前にいたんだけどね、

そうじゃないんだよ、

みんながちゃんと考える頭を持っていないと、

「別に~」「かっこいいからいいじゃーん」「興味な~い」なんてのほほんとやっていると、

もしかしたら、いつのまにか、戦争に巻き込まれてしまうかもしれないんだよ

だから、

考える力をつけてほしいんだ

それでも「戦争が必要だ」って思うことになるかもしれない

それならそれで、その意見を磨けばいい

ちゃんと、話し合って議論すればいい

自分の考えがない人は、議論もできないんだよ

どうかどうか、みんなには、きちんと議論のできる大人になってほしいんだ

 

そして、きゅっと顔色を変えて、

2冊目の『きょうりゅうのかいかた』を読んで笑ったのでした

 

2学期からは文鳥のむぎちゃんもみんなを出迎える場所に置きました

「きょ、今日はこれでおしまいにする!」とみんなさっさをクロッキー帳を閉じて、

むぎちゃんのカゴの前へ(笑)

癒やされるね

平和だね

むぎちゃんは突然の子どもたちの大群に完全に萎縮しているけれど(笑)

子どもたちも、むぎちゃんも、そのうち慣れるでしょう

 

この平和が

永遠に続くように

 

難しいことはともかく、私は目の前の子どもたちの平和を願っています

そのためには、親たちが考えることを放棄してはいけません

流されていった結果、どうなっていくか、わが子を犠牲にしてまで知りたくはありません

 

8月には、

悲しい本ですが、探して読み聞かせてみてください

3年生くらいからでいいですから

誰も、忘れてはいけない

忘れさせようとする力に、負けてはいけないと思うのです

 

ぷろふぃーる
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