どんぐり学舎

かてごりー:子どもとのくらしの中で

お手本も、プログラムもない中で得ること

中学2年の長女が、合唱コンクールのピアノ伴奏をすることになり

どういう曲か全く知らないので、インターネットで動画か音声を探してほしい

わたしに頼んできました

もう、中学生なので、時には一緒にパソコンをのぞき込むこともあるのですが、

その依頼にわたしはちょっと疑問を持ちました

 

わたしも中学3年間、合唱コンクールの伴奏を何曲もしました

楽譜を受け取った時点で、

聞いたことのある曲もあれば、初めての曲もありました

ピアノの先生に教えてもらうなんて手段は思いつかず、

1小節目から悪戦苦闘して、なんとか自力で最後まで音符を音にし、

毎日毎日練習してどうにか曲にしたものでした

 

ピアニストや、驚異的な絶対音感の持ち主なら、

譜面をみただけで頭の中に旋律もハーモニーも流れるのでしょう

でもわたしたち凡人は、音符をひとつひとつ鍵盤を叩いて音にし、

両手でその音を重ねながらなんとか曲のように組み立てていくしかありません

 

そして、わたしの時代には、インターネットなどなく、

誰かに手本を弾いてもらったこともなければ、動画で手本を見聞きするなど不可能で

 

そんなことを思い出して、なんとなく長女にはその葛藤を伝えたのです

 

確かに、動画を探して最初に聞いてみれば、「ああこんな曲か」とイメージが湧き、

練習の助けになるでしょう

でも、いま、夏休みで、あなたには時間がたっぷりある

この楽譜をいちから自分で読み解いて、自分のものにする、という経験を、

一度くらいしてみてもいいんじゃないかな

 

どうやら先生も「ネットで探して」とか簡単に言う時代

スマホを持つこともSNSも禁止している学校なのに、

インターネットで調べて、ということをよく言われてくるのには矛盾を感じるのですが…

 

とにかく長女をそんな風に古風な考えで突き放したことを

今少し冷静になって考えています

 

先進的な端末やオンラインでのサービスを使いこなすことで

今の時代を生き抜くわたしたちの暮らしは豊かになるのかもしれません

でも、

もし天変地異が起こって、電源がオフになってしまい、

体一つで生き抜かなくちゃならないときが来たら…

いや、そんな大げさなことじゃなくても、

どんなに機械を使いこなせても、自分の頭脳を自在に使いこなせない限り、

人として生きていくために必要な能力は

いつまでも身につかないし、ものにならないのではないかと

 

私たちの時代は「なかった」から触れなかった

今の時代は当たり前に「ある」から触れて当然

だけど、

それがなぜ「ある」のかって、

それは私たち一人一人のためではなく

さらに、子どもたちの成長のためにあるのでもなく

この国が、この経済の仕組みである以上、そういうことは、

私たちのささやかな生活の中の工夫でさえも無視してどんどんと進化し、

いとも簡単にかっさらっていく…

その工夫も、その努力も、そしてそれによって得るはずだった能力も

 

巷では、端末を持って外に出て、架空のモンスターを捕まえるとかいうゲームが

日本上陸だとかで大騒ぎ

すでに海外では事故も起きているというのに

そして、

大の大人がそれに没頭している異様な光景も報道されているのに

ああ、なんか、昔、限定のおもちゃを買うために前日から行列に並ぶ親の姿が報道されて、

なんだかあの時と似ています

子どもと一緒に外を歩く機会が増えそう、とか、

いろんな場所に行きたくなりそう、とか、

いかにも夏休みをターゲットにしたこのタイミングに

わたしはまたひとつ、

親子の間にすっと入り込んだ冷たい金属の壁のようなものを感じました

いかにもコミュニケーションが増えたような、

そんな錯覚をするのでしょうけれど、

少なくとも画面を見ながら

いいえ、画面しか見ないで外を歩き回るそのゲームは、

子どもたちの好奇心をますますその小さな画面と端末の中に閉じこめて、

逆に捕らわれて、

可能性の翼のもとをもぎ取られることになるのです

親子関係が豊かになるわけなどないのです

ソフトを開発した人の思考は確かに豊かで才能に溢れたものかもしれません

でも、

ただそれに没頭することしかできない一般のユーザーは、

それにのっとってプレイして楽しんで技を磨くことはできても、

所詮、そのソフトの中だけでのことです

でも、誰もそれに気付きません

気付いた人から手放しているはずですが

 

ダメですか?

トンボを追いかけるのでは

海や川の魚を追いかけるのでは

雲を見上げるのでは

風に吹かれる葉っぱでは

ダメですか?

 

豊かな機械をひとつ手に入れる度に

豊かな心と可能性をひとつ失う

ひとつじゃなく、ふたつみっついっぺんに失う

そんな気がしてなりません

 

階下から長女のピアノの音が聴こえてきました

思春期だから、わたしを恨んでいるでしょうか?

楽譜を追って、ひとつひとつ音を探しています

夏休み終わりまでに完璧にしたい、と話していました

長女はやり遂げるでしょうか

 

わたしは楽しみながら見守ろうと思います

ぷろふぃーる
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